高齢になると徐々に飲み込みの機能は低下します。
また、脳卒中による麻痺の後遺症としても摂食嚥下機能の低下が起こり、誤嚥の危険性も高まります。
そのため、摂食嚥下機能の状態に応じて、適切な食形態を設定することが安全な食事介助に繋がります。
目次
介護食品が必要な理由
食事摂取量の維持は、病気の有無に関わらず、高齢者の健康維持や生活の質を向上させるために欠かせない要素です。
しかし、高齢者は年齢とともに咀嚼能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴い、食事摂取量も低下すると言われています。
また、脳卒中による片麻痺などの影響によっても嚥下機能は低下し、食事摂取量の低下へと至ります。
本来、ヒトが摂取しなければならない栄養素として、タンパク質やビタミン、ミネラルがあります。
これらの栄養素が不足すると、筋力の低下や免疫力の低下を招く恐れがあります。
そのため、食事摂取量が低下している場合には介護食品を取り入れ、必要な栄養を効率よく摂取することを検討します。
最近の介護食品は、味や食感、風味が改良されている商品が多く、以前に比べて食事を楽しむことが容易になっています。
筆者も、介護食品の栄養ゼリーを試食したことがありますが、鉄分などの苦みを感じることなくおいしく頂くことができました。
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介護食の種類は4つ 食べる能力に応じて適切な食形態を選ぶ
介護食は、きざみ食・ソフト食・ミキサー食・ペースト食の4つに分類されます。
その人の咀嚼・嚥下機能によって選択すべき種類が異なるため、適切なものを選ぶ際には、医師や言語聴覚士に相談しましょう。
きざみ食
きざみ食は5mm~1・2cm位に細かく刻んだ食事のことです。
噛む力が弱い方や歯がないために食物をすりつぶせない方向けの食形態です。
注意点として、きざみ食は口の中でぱらついてしまい食物がうまく口のなかでまとまりにくいという特徴もあります。
そのため、飲み込む力が低下している方にとっては誤嚥の可能性もあるため注意が必要です。
ソフト食
歯ぐきや舌でも十分に食物をつぶせるだけの柔らかい状態の介護食です。
柔らかく煮込まれたものや、ペースト状の食物を元の形状に戻したものなどが該当します。
きざみ食と異なり、食材がまとまっているため飲み込む力がやや低下している人でも安全に食事を楽しむことができます。
また、ペースト食などと比べてその食材の本来の形状に近い状態で提供できるため、見た目も楽しむことができます。
欠点は食材を柔らかくするために調理に必要な時間がかかってしまうことです。
ミキサー食
咀嚼嚥下機能がさらに低下している方人向けの形態です。
食材をミキサーで細かく粉砕し、半液体状にすることで、噛まずに飲み込むことができます。
メリットは食材が細かくなることによる栄養の吸収率の向上です。
デメリットとしては、食材の元々の形状がわからなくなってしまうため、食欲が湧きにくい点が挙げられます。
ペースト食
ミキサー食と同様に食材がしっかりとすり潰された形態です。
ペースト食はミキサー食よりもさらに水分量を少なくすることで粘度が増し、ミキサー食よりも誤嚥しにくくなっています。
スマイルケア食とは
農林水産省では、「スマイルケア食」という名称で食形態を分類しています。
ユニバーサルデザインフードなど、そのほかの食形態の分類との整合性が保たれたものになっており、以下の3色で表現されます。
・健康維持のために栄養補給が必要な方向けの「青」マーク
・咀嚼(噛む)機能が低下した方向けの「黄」マーク 2・3・4・5段階構成
・嚥下(飲み込む)機能が低下した向けの食品に「赤」マーク 0・1・2段階構成
令和7年1月31日時点では、「青」マーク商品が198種、「黄」マーク商品が6種、「赤」マーク商品が14種となっており、まだ種類が少ない印象です。
ユニバーサルデザインフードとは
病気を抱える方にとっては、特定の栄養素を強化した介護食を選ぶことで、症状の改善を促進することができます。
カロリー摂取量を維持するための高カロリーゼリーや、カルシウム・鉄分を多く含んだものなど様々なタイプが販売されています。
しかし、どんなに栄養が多く含まれた介護食品でも、その人の摂食嚥下機能にあったものを選べないと、疲労による食事摂取量の低下や誤嚥性肺炎などの問題が発生します。
そんななか、介護食品には「ユニバーサルデザインフード」(以下、UDF)という食べやすさに配慮した食品が存在します。
これは、「かたさ」や「粘度」を考慮して4つに区分され、適合する介護食品にはこのマークが記載されています。
日本介護食品協議会が自主規格として2003年に作成しているので、商品購入前にパッケージを確認しましょう。
「容易にかめる」~「かまなくてよい」の4段階に分かれており、本人様の状態に合った食品を選びやすくなります。
区分1:容易にかめる状態の一例は、通常のごはんや厚焼き卵、肉じゃがなどが挙げられます。
区分2:歯ぐきでつぶせる状態の一例は、やわらかごはん~全粥やだし巻き卵、具材の小さなやわらかい肉じゃがなどが挙げられます。
区分3:舌でつぶせる状態の一例は、全粥やスクランブルエッグ、具材の小さなさらに柔らかく煮込んだ肉じゃがなどが挙げられます。
区分4:かまなくてよい状態の一例は、ペースト粥や具なしの柔らかい茶碗蒸し、ペースト状の肉じゃがが挙げられます。
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ユニバーサルデザインフードを活用し、咀嚼嚥下機能に合わせた介護食品を選ぶ
病院や施設に入院している方の場合には、退院前に医師や管理栄養士、言語聴覚士等から食事や栄養管理のアドバイスを参考にしましょう。
筆者も病院施設で働いていた頃は、患者さんの食事形態をきざみ食や軟菜食、ペースト食等の表現で他職種と情報共有していました。
現在はUDFというわかりやすい区分があるので、どの区分が該当するのか事前に確認しておくと安心です。
以下は、介護食の種類とUDFの共通部分をまとめたものになりますので、介護食選びの参考にしていただければと思います。
UDF区分:1~4 | 1:容易にかめる | 2:歯ぐきでつぶせる | 3:舌でつぶせる | 4:かまなくてよい |
食形態 | きざみ食 | ソフト食 軟菜食 やわらか食 | ソフト食 軟菜食 やわらか食 | ムース食 ミキサー食 ペースト食 |
一例 | 通常のごはん 厚焼き玉子 | やわらかごはん~全粥 だし巻き卵 | 全粥 スクランブルエッグ | ペースト粥 具なしの柔らかい茶碗蒸し |
上記はあくまでおおよその分類です。
誤嚥のリスク軽減や楽しい食事の時間を作るためにも、実際には専門職の意見を確認してから食品を購入して頂くことをおすすめします。
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