転倒予防

介護予防のための環境設定 高齢者の転倒予防対策 ~庭~

骨折を伴う転倒は、高齢者では絶対に避けたい事故の一つ。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(令和4年)では、要介護となった原因の第3位が「骨折・転倒」となっています。

同じく厚労省の「人口動態調査」では、65 歳以上の不慮の事故を死因別で比較した結果、「転倒・転落・墜落」がその他の原因に比べて圧倒的にその割合を占めています。

とくに、「転倒・転落・墜落」の内訳をみても、同一平面上でのスリップ、つまづき、よろめきによる転倒が8割を占めているそうです。

逆に段差などの踏み外しによる転倒の方が少ないとの結果です。

さらに、この調査では、65歳以上のなかでも80歳以上の方が特につまずきやよろめきによる平面上での転倒が多いことを示しています。

つまり、80歳以上の方はその一回の転倒が生命に関わる場合もあるため、転んでから対策するのではすでに遅いのです。

この記事では、高齢者の転倒予防対策のための環境改善方法を提案させて頂きます。

高齢者の転倒が多い場所は「庭」 特に85歳以上の転倒者が多く死亡事故リスク大

冒頭で述べたように、80歳以上の方は死亡事故につながるスリップやつまずき等による転倒が多くなっています。

また、内閣府の「高齢社会対策に関する調査」によると、転倒した場所で最も多いのは「庭」の26.5%となっています。

そして、年齢階級別で見た場合、85歳以上の方は「庭」が41.7%と非常に高い割合で転倒する場所となっています。

日本家屋の「庭」というと、飛び石・砂利・芝生など、いわゆる「不整地」であることが多く不安定な地面となります。

筋力や足の感覚、視力の低下など様々な機能が低下する高齢者にとって、「庭」は高齢者の身体が適応しにくい環境といえます。

転倒予防対策① 掴まるところを増やす 住宅改修工事で手すりをつける

高齢者の転倒は、障害物がないところでも足がつまずくことで発生します。

転ばないための対策の一つは、移動する範囲に手すりを設置して、手すりに掴まって移動することです。

庭先へ出る目的は人それぞれで、庭の水やりもあれば郵便物の確認など、その人の普段の役割(日課)で変わります。

水やりをする場所までの移動の際、飛び石でつまずきやすければ、その動線上に手すりを取り付けることで移動を安全に行えます。

手すりの工事を実施する場合、介護保険被保険者が申請すれば最大18万円の補助を受けることができます。

工事を検討する際には、市町村の介護保険課や最寄りの居宅介護支援事業所でケアマネージャーさんに相談しましょう。

手すりの工事で補助を受ける場合の住宅改修工事については、以下の記事をご覧ください。

転倒予防対策② 杖や歩行器を利用する 福祉用具レンタル・購入サービスの活用

庭先で転倒しないための対策二つ目は、杖や歩行器などの支持物を活用する方法です。

例えば、庭先に出る理由が洗濯物の取り込みの場合、洗濯物を運ぶという「運搬動作」が伴います。

何も持たずに歩く場合と違って、両手が洗濯物で塞がってしまうと、歩く際にバランスを取りにくく転倒のリスクが増加します。

そんな場合でも、運搬物を乗せたり多くの荷物を収納できる歩行器があれば、洗濯物を運びながら安全に歩くことができます。


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また、郵便ポストが門扉付近にあり郵便物を外へ取りに行く場合なども、ちょっとした支えになる杖を使うと安心です。

屋外の地面は砂利や小石、傾斜やぬかるみなど、バランスを取りにくい路面のため転倒のリスクが高い環境です。

そんな環境でも適応できるよう、杖の足が可動するタイプの多点杖(3or4本脚)を利用すると、そのリスクを軽減できます。

しかし、杖は使用する高さを間違えると、肩の痛みが増えたり足のバランスを十分に補助できないことがあります。

介護保険でレンタルできる杖の種類や、杖の高さの設定方法については、以下の記事で詳細を確認できます。

また、令和6年度の介護保険制度改定により、多点杖は市町村に申請することで費用の1割負担で購入することができます。

街中で見かけるT字の杖は介護保険の対象にならないので、ホームセンターや通販で購入してもよいでしょう。

しかし、より安定した歩行をサポートしてくれる多点杖は、福祉用具事業所に申請を依頼して、お得に購入するのがおすすめです。


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転倒予防対策③ つまずきにくい足を作る 介護シューズの着用

工事で手すりを付けたり、杖を使って歩くことが、庭の環境の都合で難しい場合もあります。

そんなときにできる転倒予防対策の三つ目は、介護シューズの着用です。

なかでもつま先が少し高くなっているもの(トゥスプリング)を着用することをおすすめします。

この高さが保たれることで、小さな段差や障害物があってもつま先が接触せず安全に足を振り出すことができます。

介護シューズでは、徳武産業様のあゆみシューズがこのトゥスプリングのある靴を提供しています。

このシリーズの商品は、土踏まず(足のアーチ)がつぶれないようにサポートするインソール付きもあるためより転倒予防に効果的です。


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めめんと

大学卒業後、理学療法士として回復期病院(整形・脳卒中)と老健施設(入所・認知症ユニット)で5年間の臨床活動を実施。その人の「できること」を活かした環境支援を学ぶため、現在は企業で福祉用具や住宅改修サービスの提案を行っています。

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